読みもの
季節の福だより ー夏の特大号 暦会館前編ー
2023.08.04 up
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
2023.08.10 up
【季節の福だより】
季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」としてお届けします。
福井の季節を切り取ってお届けする、「季節の福だより」。今回は夏の特大号<中編>です。
日本でも珍しい“暦”がテーマの資料館「暦会館」を引き続きご紹介!
二十四節気は「立秋」を迎え、暦の上では秋のはじまり。
息苦しいほどの暑さの中にふっと涼風を感じることもありますが、まだまだ夏は終わりません!
夏休みのお出かけ先や自由研究のアイデア探しにもぴったりな、福井県おおい町の暦会館。ぜひこの夏訪れてみませんか?
夏空と青々とした山に映える暦会館。山奥にありますので道中はお気をつけて。
学芸員の山田さんが、引き続き案内してくださいます。
前編では、暦会館がある福井県おおい町「名田庄(なたしょう)」と、この地に陰陽師として住んでいた土御門家(つちみかどけ)の関係について学びました。
前編はこちら
読みもの
2023.08.04 up
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
次に案内してもらったのは暦注(れきちゅう)に関するコーナー。
暦注とは、暦に書かれているさまざまな情報のこと。日付や曜日といった基本的なことのほか、天文学的な事項や年中行事、その日の吉凶占いなどがあります。
二十四節気や七十二候、十干十二支や陰陽五行説などの解説が展示されています。
二十四節気についてはこちらをチェック
七十二候についてはこちらをチェック
二十四節気と七十二候
(山田さん)
「中国から伝わった七十二候は、日本の風土や季節とは合っていない部分があり、江戸時代に渋川春海によって大きく修正されました。ここに展示してあるのは、陰陽五行の思想が強く反映されている修正前の古い七十二候です。」
例えば、二十四節気「大雪」の次候「熊蟄穴(くまあなにこもる)」は、以前は「虎始交(とらはじめてつるむ)」でした。日本に虎はいないため修正されたのだとか。
「夏至」の初候であった「鹿角解(しかのつのおつる)」は、ニホンジカの角の落ちる時期とは異なるからか、修正後は「乃東枯(なつかれくさかるる)」に変更されています。中国と日本では、鹿の角が落ちる時期がズレていたんですね。
新旧をじっくり比較してみるのも面白そうですね!
十干十二支についてはこちらもチェック
カレンダーに書かれているのを目にすることはあっても、意味まで意識することはあまりない暦注。これを機に理解を深めれば、カレンダーのある暮らしがもっと身近になりそうです。
* * *
シンプルなものだと日付と曜日、祝日くらいしか記載のない現代のカレンダーに比べて、より多くの情報が載っていた昔の暦。
今みたいになんでもすぐに検索できないし、内容を理解するのも大変そう…
なんて思っていると、山田さんがなにやら分厚い資料を見せてくれました。
なんでしょうこれは。
(山田さん)
「これは『永代大雑書萬暦大成』という、暦に関するあらゆることが一つ一つ説明されている、いわば暦の解説書です。江戸時代にはこのような解説書がものすごくたくさん作られていました。全部で200タイトル位はあったと言われていて、個人的にも集めているんですよ。」
あ、なるほど!ちゃんと解説書があったんですね!
かなりの分厚さ。読み応えありそうです。どうやって製本していたのかも気になるところ。
このページでは、その年の福徳をつかさどる神様、歳徳神(この神様のいる方角がその年の恵方になります。節分の恵方巻きでお馴染みですね。)について解説しています。
(山田さん)
「大雑書に描かれる歳徳神のイラストはよく変わっていたので、いろんな大雑書を調べてみるのも楽しいんですよ。大雑書では、暦や神様についてだけでなく、日常生活のトラブルや病気に関するおまじないのようなものまで解説されていました。」
ちなみに『永代大雑書萬暦大成』は江戸時代に始まり、昭和初期まで繰り返し発行されていたのだそう。今よりももっと、暦が人々の暮らしに密着した大切なものだったと伺えますね。
暦の解説書は大雑書だけではありません。他にも江戸時代の天文や暦を解説する貴重な資料が展示されていました。
「日東通暦」は日食の仕組みなど天文について解説しています。
「授時暦經諺解(じゅじれききょうげんかい)」。授時暦について研究されています。
授時暦とは、1280年に中国で作られた暦。優れた手法で作られており、とても正確なものだったといいます。1685年に渋川春海によって作られた「貞享暦(じょうきょうれき)」もこの授時暦を参考にして作られたそう。
* * *
展示コーナーでひときわ存在感を放つ、この大掛かりな装置は一体なんでしょう!?
こちらは、漏刻計(ろうこくけい)の復元模型。上から一定量の水が落ち、一番下の器の水位が上がっていくことで時を知らせます。
(山田さん)
「暦を作るためには正確な時を知る必要があります。漏刻計が日本で初めて公用されたのは天智天皇の時代だったと考えられています。平安時代、陰陽寮にありましたが火事で燃えてしまい、その後は復旧されませんでした。時の計測が必要な場合には香を焚いて時を計る香盤時計が用いられたりもしました。」
目盛りを指差す人形の険しい表情が個人的にツボでした。
平安時代までの造暦は朝廷が主導でしたが、江戸時代になると幕府も関わるようになります。
それまでの日本では中国から伝わった宣明暦(せんみょうれき)を元に暦を作成していましたが、800年近く使用するうちに実際の季節とのズレが生じるようになったため、1685年渋川春海によって貞享暦(じょうきょうれき)が作られました。
貞享暦は日本人が作った初めての暦法であり、その功績が認められた渋川春海は江戸幕府の初代天文方に任命されました。
その後、日本の暦は宝暦暦、寛政暦、天保暦と西洋の天文学を取り入れながら改暦を重ね、より正確な暦へと進化を続けます。
そんな歴代のさまざまな暦も展示されていますよ!
具中暦とは暦注が記載された暦で、全て漢字で書かれています。
全て漢字で書かれた具注暦に対し、主にひらがなを使用して書かれた仮名暦。
当たり前ですが、まだこの頃に現代のような壁掛けタイプや卓上タイプはなく、巻物の暦の現物を見てなんだかちょっと感動してしまったスタッフでした。
* * *
ちょっと面白い暦も見つけました!大小暦です。
江戸時代に使われていた大小暦。
ひと月に30日まである月を「大の月」、29日までの月を「小の月」といい、明治時代に太陽暦に改暦されるまでは、月の大小は固定されていませんでした。人々は毎年その年の大小を知る必要があり、そこで用いられたのが大小暦です。
(山田さん)
「こういった掛け軸タイプの大小暦は販売はされておらず、商人がお得意様に配布していました。毎年変わる月の大小を覚えるために、いかにうまく伝えるか、覚えやすい文言を作るかに工夫を凝らしていたことがわかります。この暦は文章で大の月を表現し、犬のイラストの横に小さく小の月を記しています。おそらく戌年だったのでしょうね」
大小暦は覚えやすいようにイラストになっていたり、とんちが効いていたりして、見ているだけでもなかなか面白いですよ。
パッと見て今月の大小を判別できる「大小月板」。目につきやすい場所に飾り、ひっくり返して使っていたようです。
* * *
主に江戸時代までの暦の歴史に触れ、「なるほど〜!おもしろーい!」が連発のスタッフ。
さて、旧暦に関する知識を深めたところで、中編はここまで。次回後編では明治時代以降の暦の進化をお届けします!お楽しみに!
後編はこちら
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2023.08.18 up
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…