読みもの
季節の福だより ー夏の特大号 暦会館中編ー
2023.08.10 up
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
2023.08.04 up
【季節の福だより】
季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」としてお届けします。
夏の日差しが容赦無く照りつけ、溶けそうなほどに暑い毎日。
二十四節気の12番目の節気「大暑」は、一年で最も暑さが厳しく、この暑さは大体立秋(2023年の場合8月8日)まで続くと言われています。
うだるような暑さですが、子どもたちはウキウキな夏休みの真っ最中!海に花火、旅行に帰省と、楽しみな予定がたくさん詰まっている人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな夏のお出かけ先としてぜひおすすめしたい、福井県おおい町の「暦会館」をご紹介します!
日本でも珍しい“暦”がテーマの資料館で、自由研究のアイデア探しにもぴったり。一体どんなところなんでしょうか?
福井県の南西に位置する「おおい町」。若狭湾国定公園に面し、美しいビーチやおいしい海の幸が人気の自然豊かな町です。町の約90%を山林が占めているので、海だけでなく山のレジャーも目いっぱい楽しめます。
大島半島にかかる「青戸大橋」。鮮やかな赤が夏空と海の青によく映えて、なんとも心弾む夏の景色!
西を向けば「若狭富士」とも呼ばれる美しい青葉山。関西百名山にも選ばれています。
さて、海沿いからどんどん山道に入ること約30分。見えてきたのは「名田庄(なたしょう)」と呼ばれる山深い地域です。
ぐねぐねとした山道を抜けると集落が見えてきました。日本の原風景がこの地には残っています。
星がきれいに見えるため、天体観測スポットとしても人気の名田庄。“星の降る村”とも呼ばれているそうです。なんてロマンチック!
そんな大自然に囲まれたこの村にあるのが、日本でも珍しい、暦をテーマにした資料館「暦会館」。
暦や陰陽道に関する貴重な資料が展示されており、暦の深い歴史に触れることができます。
カレンダーを作り続けて150余年のカレンダー会社のスタッフとしては、一度は訪れておきたい場所でした。
満を持して、いざ訪問!
校倉造りの暦会館。外観からすでに雰囲気がありますね!
日時計のモニュメントもありました。
今回、暦会館を詳しく案内して下さったのは、学芸員の山田さんです。
懇切丁寧に、かつユーモアたっぷりに、暦について解説してくださいました!
ファンサうちわ(館内にあります!ぜひ手にとって撮影してみてください)をノリノリで持ってくださる山田さん。
ところで、そもそもなぜこんな山奥に暦の資料館があるのでしょうか。
それには、この村の歴史が深く関係していました。
そんな名田庄と暦の関係を知ることができるのが、館内に入ってすぐのこちらのコーナー。
(山田さん)
「ここ名田庄の納田終(のたおい)地区は、安倍晴明の子孫である土御門家(つちみかどけ)にゆかりの深い土地です。土御門家は応仁の乱の後、混乱の続く都を離れてこの地に移り住み、土御門有宣(ありのぶ・ゆうせん)から、有春(ありはる・ゆうしゅん)、有脩(ありなが・ゆうしゅう)、久脩(ひさなが・きゅうしゅう)まで4代にわたって100年以上この名田庄に居住していました。」
安倍晴明といえば、よく映画や小説などの題材にもなる実在した陰陽師です。呪術的なイメージばかりが先行しがちですが、平安時代の朝廷には陰陽寮と呼ばれる部署があり、陰陽師たちが占い、天文、時、暦の編纂を行っていました。陰陽師と暦とは切っても切れない関係だったわけですね!
土御門家も、名田庄に住まいを移したのち、泰山府君(たいざんふくん:陰陽道の主祭神)を祀って天文道場を開き、100年近くにわたり造暦編纂を続けたといいます。そんな歴史にちなんで、この名田庄に暦会館が作られたのでした。
こんな風に綺麗な星空を観測しながら、造暦していたのでしょうか…。
こちらは天体の位置を観測するための「渾天儀(こんてんぎ)」の模型。文政年間(1819年〜)に使われていたものですが、渾天儀の登場以前も概念としては理解されていたのだそう。
土御門久脩が権力者に天体の異変を知らせた手紙「天変勘文案」(右)
(山田さん)
「この手紙は、ざっくり言うと、“天体の様子がおかしい。中国の書籍を調べると戦争や疫病が流行った時の天体はこうだった。今回ももしかしたらそうかもしれないから、お祓いをしましょう”という内容です。中国の書籍を2冊も引用し、論拠をしっかり示した書き方をしていますね。」
この時代から、偉い人への提案にはきちんとエビデンスを示していたとはなんとも興味深い…!
江戸時代になると陰陽師は免許制になります。名田庄では谷川家が陰陽師を名乗ることを認められていました。谷川家は若狭地方の中でも位の高い陰陽師だったといいます。
そんな谷川家が持つ陰陽道の許状も展示されていますので、ぜひご覧になってみてくださいね。
さて、名田庄と土御門家の関係について理解したところで、前編はここまで。
次回は、暦の歴史に迫ります!暦会館の見どころもまだまだたくさんありますので、お楽しみに!
暦会館から車で2分程の場所に土御門家のお墓があると聞き、せっかくなので帰りに訪れてみることに。
墓所に向かう途中には、福井県指定文化財でもある薬師堂がありました。江戸時代初期の茅葺き屋根の寺院建築です。
退廃的ながらも神聖で重厚な佇まいです。
さて、薬師堂の奥100mほどのところに墓所があるとのことで、勇んで進もうとしますが…
思った以上に獣道!一瞬たじろいでしまいました…。
獣害対策用のゲートを自分で開け閉めして中に入ります。
アブに追いかけられながら進みました(泣)
なんとか辿り着きました!土御門家のお墓です。
ここには有宣、有春、有脩が眠っているのだそう。
山深く人気がないこともあって、なんだか特別な空気を纏っているようにも感じられました。
近くには、泰山府君社跡などがある土御門総社や天社土御門神道本庁もあります。
土御門家の歴史を肌で感じられるこのエリア。ぜひ暦会館の前後に立ち寄ってみてくださいね!
中編はこちら
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【季節の福だより】 季節ごとの福井の風景や文化、風物詩などを、福井県福井市に本社を構えるcalendiaが「福だより」と…
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