2023.10.20 up
[季節を愉しむ一杯] 10月 -菊花茶-
移ろいゆく季節の中でほんの少し足を止め、その時その時に寄り添った一杯をゆっくり味わってみませんか?
季節をぎゅっと詰め込んだその味わい、香り、色彩が、慌ただしく過ぎ去る日々に彩りを添えてくれます。
旬の食材を使ったものや年中行事にまつわるものなど、暮らしの中で気軽に季節を愉しめるドリンクを毎月一杯ずつ紹介します。
10月の一杯「菊花茶」
仏花や観賞用として、古くから日本人に馴染みのある菊。
「重陽の節句」である9月9日は「菊の節句」とも呼ばれています。旧暦のころには、菊を愛でて菊酒を飲み、長寿を祈る行事が行われていました。(五節句について詳しくはこちら)
しかし新暦となった今、実際に菊を楽しめる季節は10月。
菊の花が見頃を迎え、全国各地で菊祭りや菊人形などの菊を愛でる催しが開かれています。
中国では菊の花をお茶にして味わう習慣があり、秋に摘んだ菊の花を乾燥させたお茶を「菊花茶」といいます。
古くから漢方の材料として使われていた菊の花。
ビタミンEを豊富に含み、眼精疲労など目のトラブルに効くと言われています。また、香りには気分を鎮める効果も。
菊花茶は中国茶の専門店などで購入できますが、実はおうちでも気軽に作れます。作り方はとってもシンプル。食用の菊を乾燥させ、お湯を注ぐだけ。
乾燥は天日干しでもいいですが、オーブンだとお手軽です。
水洗いした食用菊をクッキングシートにならべ、120度に熱したオーブンで30〜40分乾燥させます。
花の大きさによって乾燥時間が変わるので、途中で様子を確かめながら、パリパリになるまで乾燥させましょう。
あとは、器に入れて沸騰したお湯を注ぎ、蓋をして2、3分置けば菊花茶の完成です。
乾燥してキュッと縮こまっていた花が、お湯を注ぐとゆっくりと開き、爽やかでほんのり甘い香りが漂います。
淡く色づいたお湯の中を揺蕩う花は、見た目にも美しく、疲れた心にときめきをくれることでしょう。
クコの実を加えたり、緑茶や紅茶などにブレンドしたりと、アレンジも自由に楽しめます。
自然な甘さがありますが、もう少し甘みが欲しい場合はハチミツを少し加えてください。
深まる秋のくつろぎタイムは、菊花茶で季節を感じながらゆったり過ごしてみませんか?
<参考>「薬になる中国茶図鑑 茶のチカラ」講談社